財政調整基金18億円もの取り崩しで、
提案された越谷市平成24年度予算案
越谷3月市議会では、平成24年度の予算案が提案、審議されました。一年間の予算案は当初予算と呼ばれ、市長や教育長は所信表明演説を行いその年の政治、行政方針を提案、説明します。
このため、最も市長が社会や地域に対してどの様に考え、受け止めているのかよく見えてくるものです。しかも当選から3回目の予算編成の提案となっており、特色が出ています。
平成24年度予算案は総額1554億円余で、一般会計は820億円(前年比マイナス1,2%)10の特別会計総計621億円余(同プラス7,0%)病院事業会計113億円余(同プラス2,2%)となり、全体では対前年比2,2%増となり過去最大規模となっています。
特に特別会計の中では国民健康保険が前年比プラス7,5%、後記高齢者医療が同プラス15,2%、介護保険が同プラス13,1%の増額となっています。やはり社会保障費が増え続けており、一般会計の中でも民生費が331億円余と歳出の40,5%を占め対前年度比4,2%もの増となっています。また西袋土地区画整理は24億円余と同プラス27,5%もの増額となっています。
しかし一般会計の歳入の53,5%を占める市税の中で個人市民税は187億円余で対前年度比プラス3,2%、法人市民税24億円余で同プラス2、7%ですが、市民の所得が上昇したのではなく、市民への各種税額控除の廃止により結果として増額になったに過ぎません。
つまり、市民にとっては増税となっているし、3,11大震災への復興にむけ所得税等の増税も予定されています。
また、個人市民税とほぼ同額の171億円余は職員人件費として支出され、借金の返済額は84億円余となり全体の歳出の10,3%も占めています。
さらに、新規事業を予算要求ベースで39事業20億円から最終額30事業、16億円計上しています。
また、一般会計、特別会計、病院事業会計の全体の予算要求額は1714億円余で最終額は1521億円となり、何と要求額と最終予算額とは160億円もの差額が生じています。
このため、財政調整基金(災害時など緊急事態に備え積立ている基金)を18億円(基金の半分以上)と借金である臨時財政対策債41億円を歳入に計上し、何とか収支のバランスを辛うじてとっている状況です。
自治体では赤字予算を編成する事は法律で許されていません。
つまり市長は59億円の歳入不足になっているにも拘わらず総額1521億円余の過去最大規模の予算を提案したことになります。
また、一般会計の市債総額671億円余、特別会計561億円余の借金を抱えたままです。
この様な状況の中で、予算要求額と最終予算額の差に対して、160億円余の減額をしたのはどの様な考えなのか、との代表質問に市長は「なにしろ現場からの要求が強く、緊急性や必要性のほか安全性を考慮した」と答弁しています。
この答弁によく市長の政治姿勢が表れています。つまり要求があれば全額は認めないが、財政調整基金や借金をして歳入を確保し、30もの新規事業を新たに提案し、既存の620を超える事務事業のいわゆる仕訳作業には取り組まず、実効性が伴わない形式的な外部評価制度をもって事業評価をしている結果が予算案として露呈しています。
しかも累積債務は依然として改善されているとは言い難い状況が続いています。
今求められていることは、要求があるから予算を「つける」ことではなく「未来のために何かを諦める、我慢すること」ことの決断と選択肢を提起し、市民合意を形成することです。
そこには、事業を廃止、縮小することも当然起こってきますし、市民の反発も予想されます。
右肩上がりの習慣では、市民から白紙委任された市長や議会が市民や団体の利害調整をして、予算を「つけて」来ました。
今や、市民自身が当事者としてどの事業を選択し、どの様に取り組むのかを市民同士で話し合い、その過程で既得権益である市民を含めてその利害調整を行う、市民参加や市民自治による地域共同体の再生が必要となっています。