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「がんばろう、日本!」国民協議会
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Index
□ 〝いのちとくらし〟〝人権〟の視点から
「あきらめるわけにはいかない」という主体的意志を育むために
●「失われた30年」の結末に、どう向き合うのか
●新自由主義の〝正体〟と、戦略的な対抗のための視点
●人権民主主義をホンモノに!
- 戸田代表を囲む会(東京)
- 小川淳也議員 昼食セミナーのご案内
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〝いのちとくらし〟〝人権〟の視点から
「あきらめるわけにはいかない」という主体的意志を育むために
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【「失われた30年」の結末に、どう向き合うのか】
円安で円の購買力が落ち込んでいる。国際決済銀行(BIS)が発表した8月の円の実質実効為替レート(2020年=100)は73.19と、過去最低だった1970年8月(73.45)を53年ぶりに下回った。1ドル=360円の固定相場制だった時より円の価値が相対的に下がったことになる。ジャパン・アズ・ナンバーワンと持ち上げられ、(経済成長が社会問題を「解決」すると思われた)経済成長の成功例と見なされた半世紀が、チャラになったかのようだ。
今や日本の貧困率は、格差社会とされるアメリカや韓国を上回って、先進国で最悪となっている(大山典宏・高千穂大学教授 https://wedge.ismedia.jp/articles/-/30798?layout=b)。しかもアメリカ、韓国とも2010年代から貧困率は急速に改善しているのに対し、日本はほぼ横ばいのままだ。
「脱炭素社会への移行」という点でも、近年ヨーロッパ諸国が脱炭素と成長を両立させるフェーズに入りつつあるのに対し、日本はCO2削減も進まなければ経済も停滞したままという状態が続いている(諸富先生「囲む会」参照)。日本が「できない理由」を並べている間に、脱炭素に向けて世界は大きく変わっている。
ジェンダー平等についても、世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数で日本は横ばいのまま順位は下落し続け、2006年の80位から23年には過去最低の125位まで後退した。日本が足踏みをしている間に、格差解消の取り組みを進める各国に追い抜かれたということだ。
危機的とさえ言われる少子化は、こうした「失われた30年」の帰結にほかならない(今号・大内先生インタビュー、532号・山田先生「囲む会」参照)。もちろん結婚や出産は個人の選択だが、次世代を生み育てる環境や条件が見えないために子どもが生まれないという状況は、まさに社会の持続可能性の危機だろう。
ここで問われるのは、「失われた30年」の間に先送りし続けてきたこうした危機がいよいよ顕在化しつつあるときに、それでも先送りと延命を続けてタイタニック号のように沈んでいく「幸せな衰退」(山田先生 前出)の道を行くのか、それとも「あきらめるわけにはいかない」という小さくても主体的な意志をどう持つのか、ということだろう。
【新自由主義の〝正体〟と、戦略的な対抗のための視点】
冷戦の終焉を契機にグローバルに展開するようになった新自由主義・マネー資本主義は、先進国・新興国ともに99%対1%と言われるような格差を拡大し、民営化や規制緩和などによって再分配機能を縮小・解体し続けてきた。21世紀のレッセフェールとも言える、こうした新自由主義の暴走に対するさまざまな対抗措置は必要だ。同時に、今や「地球沸騰」とも言われる気候危機や、社会の解体危機ともいうべき少子化に表されるような、われわれの生存の基盤そのものを貪り喰う新自由主義の〝正体〟を、しかととらえることが必要だろう。さまざまな対抗運動を戦略的に再定義していくためにも。
ナンシー・フレイザー『資本主義は私たちをなぜ幸せにしないのか』(ちくま新書)は、新自由主義段階の資本主義の〝正体〟を描き出す。
本書は、資本主義の意味を「経済システム」にとどまらず「制度化された社会秩序」としてとらえるよう提起する。そして「経済システム」を成り立たせるための「非経済的条件」――搾取と収奪(人種間の軋轢)、再生産(危機的な少子化)、自然環境(地球沸騰)、政治統治(民主主義の危機)――を貪り喰うさまと、その危機について詳細に論じる。
「したがって本書において『資本主義』とは経済の種類ではなく、社会の種類を指す。その社会では、公的経済が投資家と所有者のために貨幣価値を積み上げることと、それ以外の人の非経済的な富を貪り喰うことにお墨付きを与える。・・・ところが、そうやって消費した分を補填したり、損害を回復したりする義務はない。そして、そこにこそ問題の原因がある。・・・資本主義社会は己を貪り喰おうとする。みずからがみずからを不安定化する真の原動力であり、周期的に危機を引き起こすとともに、つねに私たちの存在の基盤を喰い荒らす。
そうであれば、共喰い資本主義こそ現在の危機の根源だ。率直に言って、それは珍しいタイプの危機である。なぜなら、さまざまな大喰いが一つに収斂した危機だからだ。私たちが直面しているのは、数十年に及ぶ金融危機が生んだ、〝単に〟激しい不平等と不安定な低賃金労働の危機ではない。ケアあるいは社会的再生産に〝限った〟危機でもない。移民と人種差別が絡んだ〝ただの〟暴力の危機でもない。温暖化する地球が致死性の感染症を生み出す、生態系〝だけ〟の危機でもなければ、空洞化したインフラ、先鋭化する民間武装勢力、独裁者が次々に登場する〝単なる〟政治的危機でもない。いや、それ以上に深刻だ。社会全体の秩序が全般的な危機に陥っている」(序章)
「最後に、共喰い資本主義は、複雑に絡み合ったさまざまな社会闘争を引き起こす。・・・それは生産と社会的再生産が隣接する場所で、公共か民間か、有償か無償かを問わず、ケアをめぐって対立を誘発する。それは搾取と収奪が交差する場所で、〝人種〟、移民、帝国をめぐって闘争を煽動する。それはまた、蓄積と地球の岩盤がぶつかる場所で、土地とエネルギー、動植物相、地球の運命をめぐって衝突を引き起こす。そして最後に、グローバル市場と巨大企業が国民国家や国境をまたぐ統治機関と出会う場所では、公的権力のかたち、支配、権限が届く範囲をめぐって闘争を駆り立てる。資本主義の概念を拡張すると、単一であると同時に分化した概念のなかに、私たちが陥っている現在の窮地のあらゆる構成要素が見つかる」(序章)
本書は、こうしたさまざまな社会闘争を「境界闘争」と呼び、「資本主義社会の構造を決定的にかたちづくる」として、こう述べる。
「生産場面の労働と資本の闘争に限らない。ジェンダー支配、エコロジー、人種主義、帝国主義、民主主義をめぐる境界闘争もそうだ。だが同じくらい重要なのは、境界闘争がいま、新たな光のなかに浮かび上がってきていることだ。資本主義のなかの闘争、資本主義をめぐる闘争、そして(一部のケースにおいて)資本主義そのものに対する闘争である。闘争の参加者がみずからをこれらの言葉で理解するようになれば、協力するか団結することもできるだろう」(第1章)
われわれの生存の基盤そのものを解体しつつある新自由主義の暴走に対抗していくためには、コロナ禍で痛感した〝いのちとくらし〟の視点に立つことが不可欠だ。そして、さまざまな対抗措置を戦略的に再定義し連帯していくうえで、「制度化された社会秩序としての資本主義」批判の視点は有益だろう。
例えば、気候危機に対して「気候正義」という観点から対抗するなら、CO2を削減する〝だけ〟ではなく、脱炭素社会への「公正な移行とは」という問いが生まれるだろう。
そこからは例えば「利潤よりも人々の基本的なニーズを満たすことを優先する経済システムに転換し、より民主的な意思決定プロセスを実現することなしには、『緩和』も『適応』もうまくいかないのではないかと思います」、「一般的に言われている政治の民主主義の話だけではなく、経済自体を民主的に、自分たちの手で管理できる状況を目指さなくてはいけませんよね。・・・止めようとしているのは、利益を最大化するために資本主義的な意味で効率よく、自然をむさぼり食って利益に変えていく巨大な装置です」(座談会「気候危機を生きていく」世界10月号より)というような「新たな構図」への可能性も開かれていくのではないか。
【人権民主主義をホンモノに!】
境界闘争に不可欠なのは、〝いのちとくらし〟の視点とともに人権の視点だろう。
核廃絶に取り組む若者は、G7広島ビジョンに「すべての者にとっての安全が損なわれない形での」という条件つきの核なき世界が謳われたことを、同様の文言がLGBT「理解増進」法に見られたこととあわせて批判する。そして「唯一の戦争被爆国」というだけではなく、過去の戦争と現在の核政策における日本の加害にも向き合わなければならないという(田中美穂「岸田首相、核廃絶はできますか?」世界10月号より)。通底しているのは人権という視点だろう。
別の角度から考えてみよう。『資本主義は私たちをなぜ幸せにしないのか』の解説で、 白井聡は次のように述べる。
「以上の過程を追ってみると、やり切れない気持ちにならざるを得ない。誰か(例えば、白人男性労働者)の権利獲得や富裕化は、別の誰か(有色人種や女性、あるいは自然)に対する収奪によって可能になった、という事実が突きつけられるからである。つまり、資本主義システムが蓄積体制を変化させるとき、その矛盾は解消されるのではなく、別の位相に転位される、言い換えれば、矛盾のツケを他の誰かに負わせる、あるいは負わせ方を変えるにすぎないことがわかる」
資本主義が引き起こす社会闘争が、こうした不公正に転じないようにするためにはどうしたらいいのか。例えば「「気候変動はみんなの問題。でもその影響は平等じゃない」(2023年9月京都、『ワタシのミライ』プラカード)のように、「気候正義」という視点は少なくともそのことに自覚的であろうとするものだろう。その基礎には、やはり人権という視点が不可欠だろう。
入管法改悪やLGBT「理解増進」法では、問題の当事者だけでなく、連帯する行動が法案成立後も各地でのスタンディングや支援などの形で続いている。そこには、「自分が直接困る問題ではないけれど、知った以上は見て見ぬふりはできない」という「無知」でいられたマジョリティーの構造を問う当事者意識も生まれてくる。そこからの人権意識は、矛盾のツケを他の誰かに負わせる結果にならないように自覚的に行動する基礎になるはずだ。
人権は今や国際政治の重要なイシューでもあるはずで、岸田政権は初めて首相補佐官に「人権担当」を置いた。ところが先の内閣改造で「人権担当補佐官」ポストはなくなり、代わりに(?)労組出身の元議員が「賃金・雇用担当補佐官」となった。政局的にはきわめて「わかりやすい」が、政治的メッセージとしては最悪と言わざるを得ない。岸田政権にとって「人権」はその程度の〝軽さ〟でしかなかったのか。
その程度でしかないから、アイヌの人たちを差別し法務省から「人権侵犯」と認定された杉田水脈衆院議員を、批判があるなかでも党の環境部会長代理に就けたのか。杉田氏はこれまでも同性カップルについて「『生産性』がない」、性暴力の被害者に対して「女性はいくらでも嘘をつける」などと発言し、たびたび批判を受けてきた。 2022年には総務大臣政務官に就任したものの、度重なる差別発言が国会内外で批判され、4ヶ月ほどで事実上の更迭となった。人権侵害を意に介さないこのような人物を、自民党はまた比例代表候補として立てるのか。それでも有権者は投票用紙に「自民党」と書くのか。私たちの人権意識も問われる。
(「日本再生」533号 一面より)
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参考
『資本主義は私たちをなぜ幸せにしないのか』解説|ちくま新書|白井 聡|webちくま (webchikuma.jp)
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第215回 東京・「戸田代表を囲む会【会員限定】
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第215回 東京・戸田代表を囲む会【会員限定】
10月11日(水) 18時30分から
「がんばろう、日本!」国民協議会 市ヶ谷事務所
「台湾を訪問して」(仮)
ゲストスピーカー 大島敦・衆議院議員
参加費 会員2000円 同人1000円
大島議員から、台湾視察についてお話ししていただきます。あわせて、秋からの国会にどう臨むかについても・・・
オンライン参加の申し込みは下記より
締め切り 10月10日 18時まで
10月10日 18時以降、申し込みのあったアドレスにZOOMのアクセス先をお知らせします。
リアル、オンラインとも【会員限定】です。
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小川淳也・衆院議員 東京後援会 昼食セミナー
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久しぶりの開催となる、小川議員の「昼食セミナー」のご案内です。
11月20日(月) 12時から13時
ルポール麹町2F ロイヤルクリスタル
会費 10000円
申し込みは 03-3508-7621 または info@junbo.org まで 締め切り 11月6日
会費の支払いは当日または振り込み
振込先/りそな銀行 衆議院支店 (普) 0036389 東京小川淳也後援会 代表 宇都宮崇人(ウツノミヤタカト)
問い合わせ先 小川淳也事務所 03-3508-7621