メルマガ♯がんばろう、日本!         №273(21.4.29)

「がんばろう、日本!」国民協議会

がんばろう!日本!! 国民協議会

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Index 

●バイデン政権100日目 歴史的転換にむけた移行期の始まりの始まり?

●ミルクティー同盟が問う東アジアの人権・民主主義の歴史的転換

  • のお知らせ

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社会の持続可能性、民主主義の復元力を鍛えるための歴史的転換の〝始まりの始まり〟へ

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●バイデン政権100日目 歴史的転換にむけた移行期の始まりの始まり? 

 バイデン政権が発足して100日を迎えようとしている。政権発足からの100日は新政権の方向を決めるとされている。バイデン政権に対する期待は、トランプ政権時代の混乱を落ち着かせてほしいという以上ではないと思われていた。しかしこの間バイデン政権は想定以上に大胆な政策転換の方向性を示しており、世論調査の支持率もオバマ、ブッシュ(父)政権とほぼ同水準と、党派的分断が激しいなかでは好調といえる。

 バイデン新政権が打ち出してきた政策転換は、一言で言えば、「トランプ的なるもの」を生み出すに至った社会経済構造を転換するための移行プロセスの政策パッケージといえるだろう。

外交・安全保障においては同盟国との関係を重視した国際協調路線への転換とともに、安全保障概念を経済や技術、気候変動、人権などに広げた。中国との関係も、こうした文脈から民主主義対権威主義という構図に位置付けられる。いわゆる「新冷戦」観の延長ではとらえられないステージが始まろうとしている。

 内政においては、大規模な財政出動と市場介入を伴う「大きな政府」への転換によって、アメリカ社会の立て直しを図ろうとしており、ここでも「人への投資」や「インイクオリティ(不平等)の経済学」へ経済社会政策の焦点が転換されようとしている。旧来型の「バラマキ批判」の視点からでは見えてこない、新自由主義からの転換にむけた移行期への挑戦の始まりといえる。今後の政治プロセスにおいて紆余曲折や妥協が伴うのは当然だが、少なくとも新政権がめざす方向性はかなり鮮明になりつつある。

 きわめて単純化していえば、今や各国が直面しているのは「コロナ」と気候変動という人類的な危機にどう対処するのか、そしてそこからのリカバリーを図るための政策転換をどう準備できるのか、である。危機が浮き彫りにしたのは、グローバルな資本主義の暴走が社会の存続基盤、人々の生存基盤そのものを掘り崩すということだ。コロナ禍からの復興が気候正義に反するものでは意味がない(むしろ害悪)。問われているのは、これまで同様の利益の極大化や「さらなる経済成長」ではなく、社会の持続可能性や強靭性、復元力であり、そのための転換である。民主主義対権威主義という構図は、ここでのガバナンスをめぐるものでもある。

 バイデン政権は、まず1兆9000億ドルの救済策でコロナで貧窮した人々を下支えし(American Rescue Plan)、続いて2兆ドルのインフラ投資を打ち出している(American Jobs Plan)。財源は高所得世帯への増税、税金や不動産投資の収益への税率増、大企業の法人増税を充てるとしている。グローバル化の下、先進各国で進んできた法人税率引き下げ競争は「底辺への競争」とも言われ、社会の存続基盤そのものを脅かすまでになっていた。そこからの転換が欧米で始まりつつある(6―7面 諸富教授参照)。

歳出面でもインフラ投資の概念を大きく転換させた。道路や橋、電力網などの「既存インフラの修繕」と、ブロードバンド網の整備や代替エネルギー設備の配備など、未来の産業化をにらんだ「新規インフラの整備」という物理的なインフラのほかに、「ヒューマン・インフラストラクチャー」(人への投資)へ公共投資の概念が拡張されている。加えて社会政策として、キャピタルゲイン課税増税を財源とする1兆ドル規模の育児や幼児教育分野への投資が計画されている(American Families Plan)。

こうした政策転換を大恐慌時代のニューディール政策とルーズベルト大統領になぞらえる報道もあるというが、次のような指摘は興味深い。

「違いがあるとすれば、FDR(フランクリン・デラノ・ルーズベルト)[美知子1] 、アメリカという「国」の「安堵(Relief)」、「回復(Recovery)」、「改革(Reform)」を目指していたのに対して、バイデンの〝Rescue〟、〝Jobs〟、〝Families〟はあくまでも、一人ひとりのアメリカ「市民」の生活に焦点を当てているところだ。

そうしたところも、バイデンの強調する「デモクラシー」のための視点といえる。個々人のアメリカ市民が安心して生活できない限り、人びとの政治参加からなるデモクラシーは立ち行かないという態度表明でもある」(池田純一 WIRED 4/23)。

これは、権威主義との対抗関係のなかで民主主義の復元力をいかに鍛えていくか、という舞台でもある。

「戦後先進国の政治経済は、①階級的基盤を持つ安定した政党制②国家の市場への介入と再分配による平等③教育による安定雇用と家庭内労働――から成り立っていた。だが1970年代からの財政赤字とインフレ、社会騒乱による統治能力の減退と80~90年代の新自由主義を経て、①政党支持の液状化②競争志向の国家③不安定雇用と家族の多様化――により、その前提条件は失われている。政府は市場と歳出入の統御に失敗し続け、それが市民からの信頼を喪失するという悪循環に陥っている。

そして、同時期に始まったグローバルな自由主義経済とデジタル化は、ポスト冷戦期に再編を経験した新興民主主義国や、個人の自由を抑制して効率的な配分を進めることを可能にする権威主義国家にとっての好条件をつくり出している。

2000年代の天然資源の高騰やIT(情報技術)・人口知能(AI)技術の進展から中国など権威主義国は、政治的抑圧に代えてガバナンス(統治)能力を向上させ、周辺地域や世界秩序への挑戦者として台頭している」(吉田徹・同志社大学教授 日経4/20「経済教室」)。

 いまや「世界の自由民主主義国数は10年代初めにピークアウトし、19年には非自由民主主義国が多数となった(スウェーデンのV―Dem研究所調査)。世界で最も人口の多い15カ国のうち、民主国は日本や米国など6カ国にとどまる」(吉田 前出)という状況のなかで、民主主義の強靭性や復元力を鍛えるための社会経済構造の歴史的な転換が問われている。

●ミルクティー同盟が問う東アジアの人権・民主主義の歴史的転換

 民主主義をめぐる歴史的な構造転換が問われているのは、先進国だけではない。

 ミャンマーでは、国軍のクーデターに対して、多くの市民が市民的不服従運動でねばり強く抗議を続け、国際社会に支援を訴えている。大規模な民主化運動が軍によって鎮圧された1988年と比べると、民主化時代に育った若者(Z世代)、都市部にとどまらない農村・地方での根強い抵抗、スーチー氏が率いるNLDに批判的だった少数民族の参画などの構造的変化があり、彼らが「国軍との最後の闘い」と位置付ける今回の「革命」の種は、十年前からミャンマー社会のあちこちに蒔かれてきたことが分かる。こうした社会構造の変化と人々の意識変化(主権者意識の定着)は、もはや力による鎮圧で抑え込むことはできない。

 もうひとつ注目されるのが、台湾、香港、タイ、ミャンマーなどの民主化運動を担う若者たちの「ミルクティー同盟」だ。タイの民主化運動を担う学生はこう語っている。(論座2020/9/6 吉岡桂子・朝日新聞編集委員)

――「ミルクティー同盟」についてうかがいます。タイと中国の若者が今春、台湾や香港の位置づけをめぐってネット上で衝突し、タイ側の援護にまわった台湾、香港とタイのネットユーザーとの間に「ミルクティー同盟」と呼ばれるバーチャルなつながりができました。オレンジ色の甘いタイティー、台湾はタピオカ入り、香港は練乳で甘味をつけた濃い紅茶と、それぞれ名物のミルクティーを絆にした精神的な結びつきだそうです。バンコクの反政府集会で取材したタイ人の学生は、タイ、香港、台湾とも、権威主義と戦っている共通点があると話していました。

 ミルクティー同盟の出現にはとても驚いた。若い世代をひきつけるキュートなネーミングだと思う。インターネットから偶然に生まれた。中国のネットユーザーからの攻撃に立ち向かうタイと台湾、香港とのあいだに何か共通点を探そうとして、どこからともなくそう呼ばれるようになった、ときいている。ユーモアがあるでしょう。

 この同盟は、中国のイメージとは対照的。中国は強大で人口も多いけど、若者にとって魅力的ではない。そもそも、こんな同盟に対しても、中国は米国が背景にいるとか、いつもの陰謀論を言っているのですよ。中国政府は、国外でも民主運動が広がっていくのがいやなので、タイでは軍政を支持してきたし、(タイの若者による反政府運動についても)タイ政府側を支持するだろう。それがまた、われわれからすれば魅力的ではない。台湾がコロナの対応をはじめ、LGBTや人権の問題などで魅力的に映るのと対照的です。

 大事なのは、「中国」だけと戦う反中同盟にしてはならないことだと思います。あくまでも中国的なもの、つまり非民主的な制度と戦う同盟なのです。内なる権威主義と戦うのです。この意義を共有するとき、同盟はよりパワフルになると思う。

1996年生まれのこの学生は、2014年5月の軍事クーデターで成立した軍政(2019年3月総選挙を経て民政復帰)、それに連なる現政権や権威主義的な教育のありかたなどを批判してきた。ノーベル平和賞を受賞した中国の知識人劉暁波氏(故人)や香港の民主活動家黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏らの著書を仲間とタイ語に翻訳したという。

 ミャンマーの抗議デモで参加者が示す三本指も、タイの抗議運動から始まったもの。元々は映画からとられたものだというが、こうしたポップカルチャーを多用するスタイルや、催涙ガスへの対処、SNSでの情報共有のノウハウなど実践的なマニュアルも共有されている。こうしたマニュアルをビルマ語に翻訳し、SNSで共有した男性は外国メディアのインタビューに「近くの国で若者がどうやって政治に参加しているかがわかった。それが我々を後押ししている」と述べている。

 ミルクティー同盟の意義は、「「中国」だけと戦う反中同盟にしてはならないことだと思います。あくまでも中国的なもの、つまり非民主的な制度と戦う同盟なのです。内なる権威主義と戦うのです」(タイ学生 前出)というところにある。「自由で開かれたインド太平洋」やクアッド(日米豪印)が単なる「対中包囲網」ではなく、東アジアにおける人権、民主主義の構造転換にどう関われるかは、彼らにどう応答するかにかかっているともいえるだろう。イギリス、フランス、ドイツなどもインド太平洋への戦略的関わりを始めた今、日本にはこれまでの「政経分離」や援助外交とはレベルの違う、民主主義の構造転換をめぐるアジアとの関係構築が問われている。

「日本は欧米諸国と異なり、これまで人権を外交上の〝錦の御旗〟として掲げてはきませんでした。人間の安全保障を重視し、貧困の撲滅、教育や医療の整備、インフラ構築などに取り組むことで、いわば社会全体の底上げを図ることを重視してきました。しかし、これからは人権外交にも挑んでいくべきです。もちろん、これに取り組めばビジネス活動に支障を来すケースも出てくると思います。この影響を無視することはできません。しかし、ビジネスの世界でもESG(環境・社会・企業統治)を重視する傾向が強まってきました。この傾向は今後さらに強くなっていくと考えます。それを踏まえて、人権外交も展開する必要があります」(佐橋亮・東京大学准教授 日経ビジネスオンライン4/23)。

日本はミャンマーの国軍に対してODAの新規案件を停止したものの、市民が求める既存案件の全面停止には踏み切っていない。新規案件の停止だけでも欧米の制裁以上になるというが、なぜ「制裁」という国軍に対する明確な意思表示をしないのか。

宮本雄二・元中国大使は、ウイグルでの人権侵害に対して欧米が制裁を強化しているなか、日本が及び腰であることについて、制裁発動は国内世論対策で日本は国内世論が弱い、欧米の人権も絶対ではなく、われわれはもう少し中国を理解すべき、制裁の結果得られるものはない、などと述べている(朝日新聞デジタル版4/27)。これまでの「政経分離」や援助外交の延長では、中国という巨大な市場やビジネスチャンス、最後のフロンティアといわれるミャンマーへの投資(ODA)を失うことを恐れて、ミャンマー国軍や中国に対するメッセージをあいまいにすることになる。そして「国内世論が弱い」ままでは、ここまで集積されてきたアジアの民主主義、人権が蹂躙されることに対して「見て見ぬふり」をすることになる。

中国の論理を理解することは必要だ。しかしそれは中国と宥和するためではなく、押し返すところは押し返し、守るべきものを守りながら、では何なら協力できるのか、必死で考え抜くためにこそ必要なのだ。人権や民主主義は取引のカードではない。

日米共同声明は「台湾」を明記した。台湾をめぐる民主主義対権威主義の構図に踏み込むということは、ミルクティー同盟が問う東アジアの人権・民主主義の歴史的転換にどう応えるのか、ということと表裏一体のはずだ。同時に、「国際人権法に違反」と国連から指摘される入国管理制度をさらに改悪するという、「内なる」非自由民主主義とどう闘うのかということでもあるはずだ。

ジェンダー平等や性的少数者の権利、多文化共生などをめぐって、日本社会の価値観は少なからず更新されてきた。そうした社会のなかの価値観のアップデートが、東アジアの人権・民主主義の歴史的転換とどう連帯できるのか。私たち自身が問われている。

(「日本再生」504号一面より)

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第九回大会第六回総会【会員限定】を、以下のように開催します。

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5月9日(日) 13時から17時

ZOOMにて

テーマ:第十回大会にむけて

趣旨

「第十回大会にむけて」とありますが、そのための主体上の準備をどう進めていくか。その基本的な方向性を共有する一歩としたいと思います。(総選挙のこともあり、大会の準備には一年程度かけたいと考えています。)

第九回大会では「国民主権で統治機構を作りこんでいく」という視点を提起しました。その土台には、民主主義は単なる多数決ではない、合意形成のプロセスだ、という民主主義観の実践的な転換がありました。

そして503号では「人権や民主主義を自らのものとして内面化する」ことを提起しています。

民主主義や人権、立憲主義といった普遍的な価値を、「言葉」として理解するだけではなく、「自らのものとして内面化する」→規律化するということは、最近の森発言をめぐっても可視化されました。以前なら炎上→辞任で幕引きになったであろうことが、「私たちの問題」として内省され、だからこそ「ただではすまされない」ことが共通認識となりつつある。内省や内面化を通じて個人が規律化され、それを通じて社会規範や社会的な行動に変革がもたらされる。

こうしたプロセスが始まっているからこそ、「今だけ、自分だけ」の消費者民主主義や、新自由主義からの主体転換ということも、生活実感レベルのリアリティとして可視化されています。そこから「議論のしかた」や「合意形成のしかた」も変化していきます。

こうした主体上の転換をどうとらえ、またより社会的なものとして深めていくか。こうした土台のうえに、社会変革や政治の変革をどう「のせて」いくか。そこで自治が担う大きな役割を、どう深めていくか。

こうした議論を通じて、十回大会を準備していきたいと思います。

ぜひご参加を。

総会【会員限定】の申し込みは

ishizu@ganbarou-nippon.ne.jp へ

締め切り 5月8日 正午まで

5月8日夕刻までに、申し込みのあったアドレス宛に、ZOOMのURLをお送りします。

(連休中はレスポンスが遅れるかもしれません)

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●REAL OSAKA シンポジウム   検証「この10年で大阪はどう変わったか」

 大阪の住民投票運動の担い手のひとつ、REAL OSAKA による3月27日のシンポジウムの動画が下記にて公開されています。

REAL OSAKA(リアルオーサカ)〜REALにはなそうOSAKAのみらい〜 (real-osaka.jp)

●『レポート2030:グリーン・リカバリーと2050年カーボン・ニュートラルを実現する2030年までのロードマップ』 

 502号インタビュー掲載の明日香・東北大学教授が関わっている「未来のためのエネルギー転換研究グループ」による「日本版グリーンリカバリー戦略」 下記よりダウンロード可能

レポート2030

●埼玉政経セミナー 「私たちの望む未来のまちをかたる」

 503号に報告掲載の上記セミナー(3/14開催)の動画が下記にて公開されています。