メルマガ♯がんばろう、日本!         №297(23.4.29)

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□ 囲む会(東京 5/12)【会員限定】、総会(5/14)【会員限定】のご案内

□ 地域自治のなかから実現していく多様性、人権の普遍性

~統一地方選から見えてくる新しい光景

●〝いのちとくらし〟に立脚した政治参画の新しい光景

●「決めるのは私たち」という責任の民主化

●自治と人権民主主義 入管法・LGBTQ・結婚差別

  • 参考記事

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第212回 戸田代表を囲む会 【会員限定】

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第212回 戸田代表を囲む会 【会員限定】

5月12日(金) 18時30分から21時

ゲストスピーカー 宮間純一・中央大学教授

「歴史手思考力を育むために」

「がんばろう、日本!」国民協議会 市ヶ谷事務所

会員/2000円  同人/1000円

*オンライン配信の申し込みは下記より

第212回 東京・戸田代表を囲む会
ゲストスピーカー 宮間純一・中央大学教授

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第14回 総会 【会員限定】

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5月14日(日) 13時から17時

テーマ 統一地方選の振り返り、教訓ならびに今後の方向性の共有

「がんばろう、日本!」国民協議会 市ヶ谷事務所

*オンライン配信の申し込みは下記より

第14回総会

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地域自治のなかから実現していく多様性、人権の普遍性

統一地方選から見えてくる新しい光景

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【〝いのちとくらし〟に立脚した政治参画の新しい光景】

「女性が半分以上いるので、これまでの『ザ・議会』という雰囲気からフワッと軽くなった印象があります。女性が居づらいという感じではないですね」。当選証書を受け取った安田真理さん(杉並区議会議員選挙でトップ当選)の感想だ(亀松太郎 ヤフーニュース4/25)。
 統一地方選は、全体としてみれば低投票率に歯止めがかからず過去最低を更新したが、後半の市長選挙と東京の区長、区議会議員選挙の平均投票率は、前回からわずかに増えた。そこから生じる変化はあるところでは劇的に、またあるところでは微妙な、しかし確実な構造的変化として表れ始めている。

区議会選挙の投票率が前回より4.19ポイント上がった杉並区では、48議席のうち新人が15人、女性は24人となり、議会の光景が劇的に変わった。市議選全体では当選者に占める女性の割合は過去最高の22.0パーセントと、はじめて二割を超えた。また東京23区では新たに3人の女性区長が誕生し、現職と合わせて過去最多の6人となった。東大和市長選で初当選した和地仁美さん(52)は、全国的に女性首長が増えた理由について「橋や道路の整備より、子育て支援など生活に密着した課題の解決への期待が、女性候補に向けられたと思う」とみる。

選挙戦の光景も変わる。北区議会に立候補した佐藤古都さんは告示翌日に出産、退院したのは投開票2日前。SNSを駆使した選挙戦でトップ当選した。佐藤さんは維新候補。維新の馬場代表は「24時間365日選挙のことを考えて活動できる、という女性でないと政治活動は難しい」という趣旨の発言をしていたが(朝日デジタル3/28)、佐藤さんはこう述べている。

「妊娠中だけではないと思います。育児中の方、介護中の方、障害や病気があって、1人での街頭活動に不安がある方、そういう方でもですね、政治に挑戦をしたいと思ったときに、挑戦ができるような、政治参加できるような、そういう形が本当に理想の政治参画じゃないかなと、私は思っております」(4/27 ヤフーニュース)。

 「起きている時間のほとんどを選挙や政治に費やしている人は本当に、ケア労働に自らも従事し、その価値を知る人よりも、市民にとってよりよい政治ができるのか。ケア労働をここまで無視した「政治」とは、本当にその名に値するものなのか。馬場氏の発言を奇貨として考えたいところだ」という前記・馬場氏の記事に対する三牧聖子・同志社大学准教授のコメントにもあるように、子育て中の女性候補や家族を介護している男性候補など、「24時間365日選挙のことを考えて活動する」という既存の「政治」とは別次元の、〝いのちとくらし〟に立脚した政治参画の新しい光景が広がろうとしている。

【「決めるのは私たち」という責任の民主化】

 東京の区長、区議会議員選挙の平均投票率は、前回から増えたとは言えわずか1.3ポイント。しかし、そのさざ波のような変化が時に共振することによって構造的な変化へとつながっていく。

東京の議会選挙で投票率の上昇が大きかったのは、豊島区4.40ポイント、武蔵野市4.23ポイント、杉並区4.19ポイント。豊島区では女性区長が誕生、武蔵野市議会は女性比率50パーセントを達成した。また練馬区議選では投票率が1.5ポイント上昇した結果、当落線上に並んでいた公明党7名のうち4名が落選。杉並区でも自民党は16人のうち7人が落選した。

杉並区では市民が「区長は変わった。次は議会」を合言葉に、党派を超えて区長に賛同する立候補予定者を一堂に集めた「合同街宣」を繰り返し開催した。また岸本区長は公務後、一人で街頭に立って区議選への投票を呼び掛ける一人街宣を連日行った。

 そこで呼びかけられていたのは、区長を支持する、あるいは既存政党の枠組みからの投票行動ではなく、「決めるのは私たち」という民主主義と住民自治の呼びかけだ。投票率は40パーセント台ではあるものの、これまで投票に行かなかった人々のなかの数パーセントが投票に行くことによって、その一票から始まるさざ波が共振して大きな変化へつながっていくことが可視化された、といえるのではないか。

児童館や公民館、まちづくり、孤立や介護など、候補者が掲げるテーマはそれぞれ多岐にわたるが、合同街宣からは、それらに通底する「私たちのめざす方向性」と、そのための対話や合意形成の共通の土台、のようなものが浮かび上がってくる。それは、528号「一灯照隅」の埼玉政経セミナーの報告にもある「コモンの場づくり」にも通じるものではないか。

敵・味方を分ける椅子取りゲームのような選挙戦の対極にあるような、「課題を共有する場としての選挙」への一歩となるか。議会と首長との的確な緊張関係や市民のフォローアップも含めて、「決めるのは私たち」という民主主義と住民自治の持続的活動が試される。

「決めるのは私たち」という呼びかけは、責任の共有―責任の民主化の呼びかけだ。住民自治は、「〇〇に賛成か反対か」というシングルイシューの民意の延長にはない。課題を共有するためには多数決ではなく、多岐にわたる課題や論点、利害などをめぐって話し合いをしていかなければならない。そこで必要なのは「ああだ、こうだと言える」民主主義であり、そうした議論を通じて何かを選ぶ・決める責任を共有するという責任の民主化だ。

たしかにそれは「面倒くさい」、「誰かがやってくれればいい、それで自分に不都合はない」、「何ならビッグデータで決めれば、おかしな政治家よりマシじゃないか」と言いたくなるかもしれない。でもその延長で、自分たちの〝いのちとくらし〟もお任せしてしまいますか、自分の生活や人生は自分で決めたいですよね、あなたも私も主権者として選択しましょう、ということではないか。

大阪では府知事、市長、府議会、市議会で維新が圧勝した。いずれも投票率は前回より2から4ポイント下がっている(とくに男性)。単独過半数を得た市議会ではさっそく、市議会定数を10削減するという。すでに府議会では定数が削減されている。「ああだ、こうだと言える」民主主義、社会の多様性を反映する議会が選挙を通じて「死んでいく」のか。知事・市長選で「アップデートおおさか」が行ったラウンドテーブルで蒔いた市民自治のタネを、これからどう育てていけるか。

【自治と人権民主主義 入管法・LGBTQ・結婚差別】

 今回の統一地方選では、性的少数者(LGBTQ)の当事者であることを公表している候補者が、東京都内の区議選では少なくとも新人3人を含む7人議席を得た。国会ではLGBTQへの理解を広める理念法ですら議論が進まない状況だが、これを変えていく最前線は地方自治の現場だ。

 一方で反動もある。統一地方選を控えた3月上旬、埼玉県の自民党公認候補のもとに、全国8万の神社を束ねる神社本庁の政治団体「神道政治連盟」から手紙が送られてきた。選挙での支援の条件として、選択的夫婦別姓やパートナーシップ制度などに反対すること、その公約書へのサインを求める内容だという。 

埼玉県議会では昨年、LGBTQへの理解増進を図る「性の多様性を尊重した社会づくり条例案」を賛成多数で可決した。提出したのは自民党会派。条例は「差別的取り扱いの禁止」も明記。LGBTQのカップルを公的に認めるパートナーシップ制度や、その子どもも家族として認めるファミリーシップ制度の整備などを県に求めている。

神道政治連盟から自民党候補への「手紙」は、こうした動きに対する反動だろう。それを乗り越えて選択的夫婦別姓やパートナーシップ制度を推進する動きを、自治の現場からどう盛り上げていくか。政党ではなく市民、有権者が主語となった地べたからの攻防になっている。

外国ルーツの候補者も。世田谷区議選ではウズベキスタン出身の女性候補が初当選を果たした。区内には2万3千人以上の外国人が居住するという。公約では起業支援やひとり親家庭支援などとともに外国人との共生支援を掲げた。参政権のない外国人支援は票にならないと言われたが、「この選挙は日本社会を変えるための挑戦。ただ票を集めればいいというわけではない」と、姿勢を変えなかったという(朝日4/27)。 

結果は6771票を獲得、定数50のうち9番目で当選を果たした。「外国人との共生」を支持する日本社会が可視化されたと言えるだろう。

一方、衆院補選千葉5区から自民党公認で立候補した英利アルフィヤさん(父はウイグル系、母はヴズベキスタン系、家族で日本国籍を取得)に対するヘイトスピーチは、ひどかった。中国系ルーツの市議候補にも、別の候補による選挙活動に名を借りたヘイトスピーチが執拗に行われたという。外国ルーツ、特に中国・韓国・朝鮮ルーツに対する差別やヘイトスピーチは、歴史的な根深さとともに、この間政治家がそれを「利用」してきた側面も見逃すことはできない。

英利氏は当選後の初仕事となる衆院法務委員会で、国連勧告でも国際的な人権基準を満たしていないと指摘されている入管法「改定」案に賛成したという。元国連職員で人権問題も担当していたという彼女の考える多様性や民主主義とは、どういうものなのだろうか。

参政党は次期衆院選の候補者公募で、新たに日本国籍を取得した人は対象外とする方針を示した。維新は国政選挙の候補者が過去に日本国籍を取得していた場合、その国籍履歴の公表を義務づけている。多様性を掲げつつ「国政」を理由にした分断や差別。それに対して、地域自治から多様性と人権の普遍性を具体化していくかという攻防ではないか。

自治は「自分たちのことは自分たちで決める」ということだが、それが誰かを排除して、「われわれ」と「それ以外」を峻別する論理に立脚すれば、いとも簡単に排外主義、〇〇ファーストに転じてしまう。だからこそ、地域自治・住民自治は人権の普遍性と一体でなければならない。そうでなければ、誰かの犠牲のうえに〝いのちとくらし〟を守ることになる。

例えば入管法「改定」案。圧倒的多数の日本国籍保有者にとっては「他人事」、ごく少数の「不法滞在者」の話でしかないかもしれない。しかし政治的迫害や家族や生活基盤がすでに日本にあるなど、さまざまな事情で出身国では生きられない人々の人権、生きる権利を奪うことを当然視するような社会では、「私たち」の人権も脅かされるのではないか。(法案については4/28朝日新聞社説を参照。)(社説)入管法改正案 課題に背を向けた国会:朝日新聞デジタル (asahi.com)

DV被害で保護を求めたのに入管に長期収容され、適切な医療を受けられないために衰弱死したウィシュマさん。日本人ならシェルターなどの支援にたどりつけたかもしれない。彼女が生きられた社会は、私たちにとっても大切な社会であるはずだ。

両親がやむをえない事情で在留資格を失い、仮放免のまま働くこともできないという子どもは、日本社会で学ぶことも、将来を夢見ることもかなわない。そんな子どもが地域にいたら、黙って「いないこと」にできるだろうか。そんな社会は私たちが望む社会なのか。(仮放免という理不尽な処遇は、国連勧告でも指摘されている。)

G7で唯一、LGBTQの差別禁止法がなく同性婚も認めていない日本。国際的な人権基準を満たしていないと、今回も国連から改善を勧告されている入管法。地域から多様性や人権の普遍性を実現していくなかで、こうした現状を変えていきたい。

(「日本再生」258号一面より)